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生活習慣病としての認知症

2017.06.21脳疲労と認知症

認知症には様々な、原因があります。若年性認知症を始めとする、若い人の認知症では生物学的、遺伝的な要素が強い影響を与えています。一方、高齢者の認知症では、環境や生活習慣が深く関係しています。認知症の大半は後期高齢者に発症します。正常の生理的老化と病的老化の境も曖昧になります。私の同門の先輩であるM先生は、ある県の老年期精神疾患センターの所長をされています。先生は、診察をされた後期高齢者に発生する認知症の約70-80%は、生活習慣が原因の「なりゆき認知症」あるいは「生きざま認知症」と言うべきものだと書かれています。次のような方は「なりゆき認知症」の予備軍だそうです。

 ・ごみ屋敷で暮らす単身高齢者 
 ・加齢とともに気性が激しくなってきた高齢者
 ・頑固で自己中心的言動がめだってきた高齢者

  また「なりゆき認知症」の特徴も挙げておられます。

 ・日常生活が受身的で、張り・目標がない 
 ・加齢とともに進行し、医療、心理、環境の対応によって影響を受ける
 ・心理・環境要因、生活習慣の見直しで改善することが多い

 日々の臨床を通してM先生の考えに共感いたします。

  私は、アルツハイマー病の多くは「精神の生活習慣病」だと考えています。運動不足、カロリーの過剰摂取、過剰なストレス、生活習慣の乱れが、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの「身体の生活習慣病」を引き起こすのと同じように、脳も適切に使用しないと、いわゆる変調をきたし、記憶を始めとする脳機能の低下、廃用性の脳萎縮を引き起こすのではないでしょうか。「生活習慣病としての認知症」という考えが、認知症への正しい理解を助ける様に思います。

  張りを持ち、目的を持って、周囲の人々となかよく、毎日を活動的に生きることが認知症予防にとって最も重要なことのように思えます 。

 文献:三山吉夫  後期高齢者の認知症の病態についてー高齢者の「なりゆき認知症」の提案 、 
九州神経精神医学、第62巻 第1号 平成28年4月15日 発行

ブックスクリニック東京・福岡 
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当 
新 福 尚 隆