BOOCSブログ
リバース
2017.05.13脳疲労と認知症
湊かなえさんに「リバース」というタイトルの小説があります。最近テレビでもドラマ化されました。見られた方も多いのではないでしょうか。湊さんは「反転(reverse)」と「再生(rebirth)」という二つの意味を重ねて「リバース」という日本語を使われています。
認知症の治療でも、近年「リバース」が話題になっています。軽度認知機能障害や、初期のアルツハイマー病 は、適切な介入を行えば正常な認知機能に「反転」、正常認知機能に「再生」が可能であるということが明らかになってきました。すべての患者さんが、アルツハイマー型認知症に「コンバート (convert) 進行 」するわけではありません。
最近のオーストラリアで行われた、軽度認知障害の高齢者を対象にした大規模な追跡調査では、一年半後に25%が正常認知機能に回復、70%が軽度認知障害の状態で持続、5%が認知機能の低下により認知症に変化していました。リバースの割合は支援や治療のあり方で大きく変わります。また調査で、薬物よりも運動や生活態度など非薬物療法の効果の方が大きいことが指摘されています。
日本では、認知症は早期診断、早期絶望といわれます。認知症と診断され、治療不能だといわれ、抗認知症薬や向精神薬を投与され、絶望したままで何もしなければあっと言う間に認知機能は低下します。軽度認知障害の多くはリバースが可能だという事実を、医師・家族・本人が理解することが必要です。リバースのために重要な要素は、次のようなことです。
・希望を持って生きること
・適度な運動
・家族や地域の人々との交流
・ストレスの軽減
・毎日の生活に目的を持つこと
・脳を活性化すること
動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病のコントロールが必要なことは、言うまでもありません。
私は、診療にあたり、患者・家族に適切な支援を行い、軽度認知障害の人を、できるだけ多くリバースさせること、認知症へコンバートさせないことを心がけています。
文献:湊 かなえ リバース 2015 講談社
現在、ブックスクリニック東京・福岡
(もの忘れ・脳疲労)外来担当
新 福 尚 隆