BOOCSブログ
お母さんのぬくもりが、赤ちゃんにとって何よりの安心 ~前編~
2025.11.19ブックスサイエンス
昔から日本には、子育て四訓と呼ばれる子育ての知恵があります。その中のひとつに「乳児は肌を離すな」という言葉があります。
この言葉は、赤ちゃんが生まれてからの一年間、お母さんの肌のぬくもりや声をすぐそばで感じながら育つことが、心の安らぎにつながるという、長い年月の中で受け継がれてきた大切な教えです。
赤ちゃんは、お母さんのおなかの中で十カ月もの間、心地よい温度と音に包まれ、安心の中で育ってきました。その世界から外へ出てきた瞬間、赤ちゃんは色や光、音、触れるもの、そのすべてが初めてのものでいっぱいです。
だからこそ、生まれたばかりの赤ちゃんは「不安」「さみしい」「こわい」という気持ちを抱えやすく、その不安を泣くことで一生懸命伝えています。
「お母さん、そばにきてほしいよ」
「抱っこしてほしいよ」
「声を聞きたいよ」
赤ちゃんが泣いて呼ぶのは、まさにそのサイン。お母さんが抱っこをしてくれる、声をかけてくれる、肌に触れてくれる——たったそれだけで、赤ちゃんの緊張はほどけ、心が満たされていきます。
ほかの動物たちと比べても、人間の赤ちゃんはとても未熟な状態で生まれてくる、と言われています。たとえば、野生動物は生まれてすぐ自分の足で立ち、歩き、母親とともに危険を避けることができますが、人間の赤ちゃんはそうはいきません。
もし人間の赤ちゃんが、おなかの中で一年長く育ってから生まれたとしたら、きっと生まれた瞬間からはいはいしたり、よちよち歩いたりできるでしょう。しかし、それではお産が難しくなり、お母さんと赤ちゃんの命に大きな負担がかかってしまいます。
だから、人間の赤ちゃんは“少し早く”生まれ、その分、生まれてから時間をかけて育っていく仕組みになっているのです。
未熟だからこそ、お母さんの助けやぬくもりが欠かせません。
赤ちゃんが頻繁に泣くのは、わがままだからではなく、「まだ自分では何もできないから、助けてほしい」という自然なサインなのです。この泣き声にそっと寄り添い、「乳児は肌を離すな」という教えが生まれたのだと思います。
