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お母さんのぬくもりが、赤ちゃんにとって何よりの安心~後編

2025.11.24ブックスサイエンス

赤ちゃんには、一人ひとり違ったリズムがあります。おむつが気持ち悪くなるタイミング、おなかがすくタイミング、眠くなるタイミング——どれも赤ちゃんによって違います。

 

家庭では、赤ちゃんの泣き声やしぐさを頼りにして、お母さんは

「どうしたのかな?」

「おなかすいたのかな?」

「おむつが気持ち悪かったんだね」

と、赤ちゃんの気持ちを想像しながらそっと関わります。

これは、赤ちゃんの気持ちを中心にした、とても自然な関わり方で、これを「消極的養護」と呼びます。“消極的”という言葉は冷たい印象に聞こえるかもしれませんが、ここでは「赤ちゃんのペースに合わせて、必要なときにだけそっと寄り添う」という、とてもやさしい意味合いを持っています。

 

赤ちゃんが泣いたら抱きしめ、泣きやんだら安心して眠る。お母さんが穏やかな声で語りかける。そんな日々の積み重ねが、赤ちゃんの心に「私は大切にされている」という深い安心を育てていきます。母と子のこのやり取りは「マザーリング」と呼ばれ、愛着形成の根っこをつくる、とても大切な時間です。

一方で、保育園や託児所では、複数の赤ちゃんを限られた人数の保育士さんが見守っています。そのため、どうしても時間で区切りながら仕事を進めなければなりません。

「10時になったからおむつの時間」

「11時だからミルクの時間」

 

これは、保育園を安全に運営するためには欠かせない対応であり、保育士さんが悪いわけではまったくありません。むしろ、多くの赤ちゃんを守るために必要な工夫なのです。ただ、家庭の育ち方とは違い、保育園では大人側が先に働きかける「積極的養護」が中心になります。これが、赤ちゃん一人ひとりのリズムを尊重する家庭での関わりとの大きな違いです。

 

だからこそ、もし環境が許すなら、生後1年間はお母さんが中心となって赤ちゃんと過ごせるのが理想的です。おなかの中で十カ月間あたためてきたお母さんこそ、赤ちゃんに安心を与える一番の存在だからです。生まれてきてからの一年間、ずっとぬくもりを感じられること。これこそが、赤ちゃんにとってかけがえのない宝物になります。

現代では「女性の活躍」が重要視され、お母さんたちは早い段階で職場に戻ることを求められがちです。もちろん、社会で活躍する女性が増えることは素晴らしいことですが、その陰で赤ちゃんが十分なお母さんのぬくもりを得られなくなってしまうのは、とても大きな問題です。

本当は社会のほうが、「まずは一年間、赤ちゃんとゆっくり過ごしてくださいね。その後も安心して働ける環境を整えます」と支えてくれる仕組みが必要なのだと思います。

お母さんが安心して子育てに向き合える環境は、結果的に社会全体の幸福にもつながります。そして何より、赤ちゃんの健やかな育ちは、未来への大きな贈り物です。

 

赤ちゃんが安心して過ごせること。お母さんが無理をせず、心穏やかに向き合えること。

この二つがそろうことで、赤ちゃんの心と体は、本来持っている力をのびのびと発揮していきます。生まれてきてくれた小さな存在が、ぬくもりとやさしさの中で育っていけるように、家庭や地域、そして社会全体で見守っていけること、それが私たちの願いです。