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アルツハイマー型認知症は、病気ではなく脳の老化過程なのか

2018.09.20脳疲労と認知症

歳をとると、白髪が増え、皮膚はたるみ、老眼になります。免疫機能は下がります。これらは、病気と言うよりも、人間としての老化過程の一部と考えるのが自然でしょう。

先日、日本の認知症研究の第一人者でもある、東京大学名誉教授 松下正明先生の「高齢社会における認知症治療」と言うタイトルの講演を聞く機会がありました。先生は、神経病理学をご専門とされ、高齢者の脳を多く解剖されておられます。先生によると、アルツハイマー型認知症の脳は正常加齢脳と区別ができない、アルツハイマー型認知症の基本的な神経病理学的所見である老人班、神経原線維変化、神経細胞変性は、正常の老化脳でも見られる変化で、その変化は年齢依存的であり、また、個人差が激しいとの事です。

老化性脳病変は、加齢に並行して増加、ある閾値を超えると認知症として発生します。認知症は、認知機能が持続的に低下して、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を意味します。従って、すべての人が長生きすればするほど認知症になる確率は増えます。つまり、正常の脳の老化過程と、アルツハイマー型認知症は連続しています。アルツハイマー型認知症は独立した病気ではなく、脳の加齢、認知機能の低下がある閾値を超えるとことによって起きます。先生は、自分の様な考え方は未だ少数意見だと言われていますが、私は先生のお考えに賛成です。認知機能の低下した高齢者を、認知症と決めつける風潮には抵抗を感じます。

アルツハイマー型認知症は、高齢になるにつれて現れてくる自然現象、昔風にいえば、老耄であり、認知症という特別な病気が発生するのではなく、白髪、皮膚のしみたるみ、老眼のように、心身の老化として出現する一種の高齢化現象として理解して欲しいということです。従って、誰にでも出現する可能性があります。先生によれば、このことは以下のような意味を持つそうです。

1)誰でも歳をとると、いずれは認知症になる。
2)他人の問題でなく、自分自身の問題である。
3)認知症の人を病人扱いしてはならない。
4)病気になったといって嘆き悲しんだり、恐れたりする必要はない。
5)認知症の人に対する偏見や差別を持ついわれはない。
6)アルツハイマー型認知症の治療薬は、老化を治療する不老不死の薬と同じく開発は不可能である。

先生の脳の老化には個人差が大きいという言葉に注目したいと思います。年齢を取るとともに、認知症になる可能性は増加します。しかし、ならない確率もあり、認知症になる確率を減らすことはできます。認知症に対する考え方も、時代とともに大きく変化します。

アルツハイマー型認知症が、老化過程としてとらえられ、病気と言う枠から外れ、抗認知症薬は必要ないと認識される日が来るかもしれません。

参考: 松下正明:高齢社会における認知症診療 夏季九大精神科同門会 H30.08.11 福岡

 

ブックスクリニック東京・福岡
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当

新 福 尚 隆