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認知機能低下からの反転 リコード法

2018.04.18脳疲労と認知症

「アルツハイマー病 真実と終焉」と言う本を読みました。著者のブレデセン博士は、著名な認知症研究者でカリフォルニア大学教授です。「米国で患者9割の症状が改善、革命的な予防治療プログラム{リコード法}、最先端の治療を詳細に初公開」との新聞広告を目にされた方もおられるかと思います。

博士は、自分の方法をリコード法と呼んでいます。リコード法(ReCODE)とは、Reversal of Cognitive Decline の略で認知機能低下からの反転(回復)を意味しています。

博士は、アルツハイマー病に特徴的なアミロイドベータの蓄積は、大きく「3つの原因」で起きると述べています。それは、脳神経細胞の慢性炎症、脂質を主とする脳の栄養不足、脳への毒性化合物の増加です。脳内環境が悪くなると、脳の保護・育成と破壊・縮小のバランスが壊れ、結果として脳にアミロイドベータが蓄積するという説です。アミロイドベータの除去を目的にした認知症薬の開発が全て失敗したのも、認知症薬の効果が限定的であるということも、博士の説に従えばよく理解できます。一時的にゴミを取り除いても、ゴミの原因を取り除かないと次から次へとゴミがたまります。従って、認知症は、慢性炎症・脳の栄養不足・毒性化合物の蓄積の「3つの原因」を防げば予防できるというものです。

また、発生の原因として「36の危険因子」が具体的に述べられています。第1の脳神経細胞の慢性炎症の原因となるリスクとしては、ストレス、脳疲労、糖尿病、高コレステロール、睡眠不足などがあげられています。第2のグループの脳の栄養障害リスクとしては、脳神経細胞や細胞膜を構成するリン脂質・必須アミノ酸・DHA・葉酸・ビタミンDや各種ビタミンの不足・高血糖・甲状腺などのホルモン異常などがあがっています。第3のグループのリスク要因としては、残留農薬・マグネシウム・カリウム・水銀・銅などの毒性化合物の過剰蓄積、逆に亜鉛や必要なミネラルの不足をあげています。

一人一人の検査所見を詳細に分析し、これらの「3つの原因」「36の危険因子」に対応して、不足したものを補い、悪い要因を除去するプログラムがリコード法と言えます。全てを、実行するのは容易ではありませんが、認知症の原因となるリスクをできるだけ避けた生活を心がけることは可能です。また、不足したものを補うのにサプリメントなども役立ちます。特にプラズマローゲンは脳の慢性炎症を抑制し、脳神経細胞を構成するリン脂質のもとになります。脳神経細胞の再生に必要不可欠な物質を多く含んでいます。

認知症の原因は複合的で、1つの薬で治療できるような簡単なものではありません。慢性炎症、栄養障害、毒性化合物を含む多くの要因が関係しているという博士の意見に賛成です。

参考文献
アルツハイマー病 真実と終焉 デール・ブレデセン 著
白澤 卓二 監修 山口茜 訳 ソシム株式会社
Reversal of cognitive decline in Alzheimer's disease.
Dale E Bredesen、et al. Aging 2016 Jun;8(6):

ブックスクリニック東京・福岡 
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当 
新 福 尚 隆