BOOCSブログ
認知症の予防
2018.11.15脳疲労と認知症
認知症に関して予防と言う言葉が使われるようになったのは比較的最近のことです。長らく、アルツハイマー型認知症は脳神経細胞の変性脱落が一方的に進行し、最後には寝たきりになるというイメージがもたれていました。私は10年以上前、老年精神医学会の座談会の折に、認知症の予防ということに関して話しをしたことがありますが、専門家からの反応は全くありませんでした。
(老年精神医学雑誌:2006/vol.17.1)
最新の科学的知見では、認知症はどの程度予防できるようになったと考えるのでしょうか。
2017年に英国医学雑誌「ランセット」では、世界の認知症専門家の研究結果をもとに「アルツハイマー病は、脳への刺激・運動・食事に気を付ければ35%は予防できる」とする論文を発表しました。予防可能な要因としては、中高年の聴力低下、中等教育の未終了、喫煙、うつ病、運動不足、社会的孤立、高血圧、肥満、糖尿病があげられています。
予防可能な要因(危険因子、リスク)を紹介したいと思います。
1)最もリスクが高いのは聴力低下で、難聴のまま放置すると認知症になるリスクが9%増えるという報告がなされています。
基本的には、音刺激による脳への刺激の減少が原因です。五感の衰えや五感を使わないと認知機能は低下します。
美しい景色、良い香り、音楽、体へのマッサージ、適度の運動は認知症を予防します。
2)次に高いのは、中等教育の未終了です。脳を使う習慣のある、高学歴の人に、認知症の発生率が低いと言われています。
3)次は喫煙で、5%近い危険率です。タバコは止めましょう。
4)喫煙に次いで高いリスクは、うつ病です。
5)次いで注目されるのは、運動不足、社会的孤立です。これらがもたらす危険率は、高血圧、肥満、糖尿病より高いことです。
アルツハイマー病が、日常生活での脳への刺激、教育、環境、生活習慣に大きく影響されるということを示しています。
あとの65%は、個人の努力では変えられないリスクだとしています。私は、将来的にはこの数字は、更に低くなると感じています。前にブログで紹介した、リコード法を唱えるプレデセン博士の方法に従えば、認知機能障害を持つ9割の人々の症状が改善したことを述べています。
日本では、2004年に大友先生がアルツハイマー病は生活習慣と密接に関係していることを指摘されています。また、2011年には、認知症予防学会が設立されています。認知症を予防するための科学的知識が増えてきて、認知症が予防できる確率は、年々上がっています。
参考文献;大友英一:呆けない生活―アルツハイマーも生活習慣病だった。祥伝社 2004年
Dementia prevention, intervention and care. The Lancet Commission, Published online July 20,2017
ブックスクリニック東京・福岡
(もの忘れ外来・脳疲労外来)を担当
新 福 尚 隆