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「不良長寿」の勧め

2019.04.07脳疲労と認知症

不老長寿ではなく「不良長寿」の勧めです。

阿川佐和子さんと大塚宣夫先生の対談「看る力」がベストセラーのコーナーに並んでいました。阿川さんは、作家であった父親の阿川弘之氏を看取り、認知症になった母親は大塚先生が理事長をされている老人保健施設に入所中です。介護をする家族として手抜き介護の勧め、罪悪感を持つくらい手抜きの介護が長期戦のためには必要だと話されています。

大塚先生は、1970年代、自分の家族を預けられる施設がないことから、理想の老人保健施設を作られたそうです。「看る力」の終わりに、認知症になったらどのような施設で世話になりたいかと言う話題で、大塚先生は、規則に縛られて食事や風呂の回数や時間を決められた施設より、好き勝手にさせてくれる「不良長寿院」が良いと話されていました。

認知症の方の生活や介護に関しては、本人の気持ちを尊重すること、介護者がストレスをためないことが大切です。「不良長寿」については、奥村康先生が『「まじめ」は寿命を縮める。「不良長寿」のすすめ』を出版され「不良長寿論」を唱えられました。作者の奥村先生は、日本免疫学会会長をされた高名な免疫学者です。

不良長寿の鍵は免疫です。免疫力は生命力です。ことに、癌細胞やウイルスをいち早く見つけて殺すNK(Natural Killer)細胞は、ストレスがあると働きが低下し、好きなこと・楽しいことをすると免疫力があがります。嫌いなことを我慢してする、縛られると免疫力が下がります。日本の諺にも「泣き面に蜂」と言う諺があります。めそめそ、くよくよして悲観的になっていると更に不幸が舞い込みます。嫌なことを我慢していると病気に襲われます。逆に「笑う門には福来る」の諺にある様に、楽観的にして笑っていると免疫力が上がります。癌にも風邪にも認知症にもかかり難くなります。

30年以上も前のことですが、フィンランドで行われた大規模な長期間の疫学調査で「定期的な健康診断、医者の健康管理と栄養指導に従ったまじめなグループと、健康診断を受けず酒も煙草も好きに楽しんでいた不良グループを比較すると、不良グループの方が病気にかかりにくく、長生きし自殺も少なかった」との結果がでています。これは驚くべき結果ですが、フィンランドパラドックスとして医学の世界ではよく知られています。医師による健康維持のための食事制限、運動の強制が逆にストレス(脳疲労)となり、免疫力が下がり、結果的に死亡率をあげたと考えられています。

ブックス法の基本的な原理は、1.禁止の禁止、自分で自分を禁止、抑制することをできるだけしない、2.快の原理、自分にとって心地よいことを一つでもよいから開始する事です。これらは、免疫力を重視する科学的な方法であるいえます。

 

参考
阿川佐和子、大塚宣夫、「看る力」アガワ流介護入門、文春新書
奥村 康、「まじめ」は寿命を縮める「不良」長寿のすすめ 宝島社新書

 

ブックスクリニック東京・福岡
(もの忘れ外来・脳疲労外来)を担当
新 福 尚 隆