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認知症薬を使わないという選択

2018.03.04脳疲労と認知症

クリニックに通院されている患者さんの中にはドネペジル(商品名:アリセプト)などの認知症の薬を、使わないという選択をされている方も少なくありません。かなり重度になっても、家族の支えがあれば問題なく自宅で生活ができているようです。ドネぺジルを服用しない理由としては(効果が感じられない・興奮状態・攻撃的態度)など様々です。ある家族からは、抗認知症薬を止めてプラズマローゲンを服用することで、落ち着いた生活ができるようになりましたという声や、歳をとったら呆けるのは当たり前だから、抗認知症薬は飲ませたくないと言われる家族もおられます。こういう家族に、見守られている患者さんは幸せと言えます。なかには、家族のみ受診されたので「患者さんの様子はどうですか」と伺うと「元気に認知症をやっています」という返事でした。こうした患者さんと接すると、認知症は地域や家庭で元気に支えていく時代になったことを教えられます。

日本では、認知症と診断されたらドネペジルを始めとした、認知症薬の処方をされることが当たり前になっていますが、こうした対応には疑問があります。

これには、いくつかの理由があります。まず、抗認知症薬の効果は、治癒でなく、進行を長くても8カ月程度遅らせるものです。その効果も、プラセボ(偽薬)と比較してもごくわずかで、フランスでは「治療的利点はない」として、治療に有効な薬として認められていません。また、軽度認知障害(MCI)には効果がなく、認知機能を改善しないという複数の二重盲検試験の結果が報告されています。

さらに、ドネぺジルは前頭側頭型認知症、脳血管性認知症には効果がありません。また、様々な副作用があることはよく知られています。ドネペジルは規定量を投与すると興奮し、攻撃的になり家族を困らせるということがよくおきます。他にも吐き気、下痢などの消化器症状を呈する方も少なくありません。脳と消化器は深い関係があります。抗認知症薬を処方された方のなかには、攻撃的になったため、鎮静のために抗精神病薬を投与され、かえって精神機能を低下される方も少なくないと思われます。

軽度認知障害(MCI)は心身の生活習慣の改善が先決です。散歩などの運動、人との楽しい交流、十分な睡眠、バランスの取れた食事に気を付けることが重要です。また、プラズマローゲンを始めとするサプリメントも、認知症の予防に効果的です。

認知症薬を使わないというご家族の選択は、賢明な選択かもしれません。

文献
1) 「薬のやめ方」事典  浜 六郎  三五館
2) Efficacy and safety of cognitive enhancers for patients with mild cognitive impairments: a systematic review and meta-analysis. 
Andrea, C.T et al, CMAJ, 2013.

ブックスクリニック東京・福岡 
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当 
新 福 尚 隆