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プラズマローゲン物語 (2) (3)を掲載しました。

2021.07.12プラズマローゲン物語

プラズマローゲン物語(2) プラズマローゲンに出会うまで

プラズマローゲンがテレビに登場

2015年2月、TBSテレビで30分番組「夢の扉+」で「認知症に新しいアプローチ!脳を守る新物質」というタイトルでプラズマローゲンが認知症の改善に効果的と紹介されたとき、その反響は大きかった。これぞ認知症の救世主だと思った人も少なくない。だが一部の専門学者を除き、プラズマローゲンという言葉を知る一般の人はほとんどいなかった。

この番組は九州大学名誉教授の藤野武彦の研究チームがプラズマローゲンの新しい抽出・精製方法に世界で初めて成功し、その物質が認知症の改善に極めて効果的だということを患者のプラズマローゲン摂取後の映像で如実に実証していった。

テレビの画面では医師の診察にもまったく反応を示さず無表情だったレビー小体型認知症の女性患者がプラズマローゲンを摂取後2週間で、診察の前に「先生いらっしゃいませ。先生にはご面倒をおかけしております」と挨拶し、診察が終わると「ありがとうございました」といいながら介護者に「先生をお送りして」と声をかけるまでに改善されていた。また、医師の「ことわざの『犬も歩けば』につづく言葉は」の質問に途方に暮れて「いやあ、犬は取り扱ったことがないので、ちょっとわかりません」と答えていたMMSE(簡易知能検査・30満点)18点の中等度レベルの意味性認知症の男性患者が、プラズマローゲン摂取後1か月でMMSE23点の軽度レベルまで回復したなどの例が画面に次々に映し出された。

 この番組を見た筑波大学名誉教授で認知症の権威のひとり朝田隆は、「このプラズマローゲンという誰の体内にもあるごくありふれた物質が、これほど認知症改善の潜在能力が高いと驚きだ。これまで誰にも注目されなかったこと自体が不思議だ」と驚きの色を隠せなかった。そして今後の課題として、「この物質が脳の中でどういうメカニズムで作用し脳が改善しているのか、そこを究明すること。今まで以上にもっと大規模な治験を行い、その効果を実証すること。この2つをクリアすれば、プラズマローゲンは非常に大きく受け入れられると思う」と指摘することも忘れてはいなかった。

「現時点で認知症の根本治療薬は存在しない。したがってこのプラズマローゲンも認知症の根治薬ではない」という藤野自身もプラズマローゲンの研究開発プロジェクトが、100%完成しているとは思っていない。この番組が制作されたとき、プラズマローゲン研究開発のチームリーダーの藤野は76歳。普通の人なら新しいことに挑戦する年齢ではない。だが「私の夢は退院できる認知症専門病院をつくること」と希望を述べ、さらに「現段階ではプラズマローゲンは機能性食品だが、これをクスリ化したい。なぜなら薬品として認められたら、健康保険でだれでもがより安い値段で使用できるようになるから」とその目標を達成するまでは現場の研究者として現役であり続ける覚悟を語っている。

それから7年、藤野は82歳を超えているが、もちろん現役の研究医であり臨床医でもある。テレビの藤野の背筋をピンと伸ばした姿は、今でも当時と少しも変わってない。毎日、福岡市博多区のビジネス街にある自分の事務所とクリニック、さらに福岡市郊外の久山町にある研究所の間を忙しく飛び回っている藤野自身、プラズマローゲンをサプリメントとして常飲していることはもちろんである。

プラズマローゲン物語(3) プラズマローゲンという物質

そもそもプラズマローゲンという物質はどういうものなのか。

プラズマローゲンは、哺乳類をはじめ動物の体の中に含まれるリン脂質の一種で、人体のリン脂質の18%を占めている。とくに脳神経細胞、心臓、骨格筋、リンパ球、精子、白血球の一種のマクロファージなどに多く含まれ、生体の維持のために重要な役割を担う物質で、古くから基礎研究がなされてきた。しかし臨床的な応用については、研究が進んでいるとは言えなかった。特に神経系に関する医学的な報告はほとんどなかった。その理由のひとつは、純粋なプラズマローゲンを生体から取り出すのが難しくて、研究を進めるための試料づくりができなかったからである。

リン脂質は細胞膜を形作る原料で、すべての細胞はこの細胞膜によって守られている。リン脂質は細胞膜を構成するとともに、それを正常に保ち、細胞膜を通って物質が出入りする透過性を維持するという重要な役割を担っている。リン脂質が不足すると細胞の動きが阻害されたり、コレステロールが血管に蓄積しやすくなって、糖尿病や動脈硬化などを引き起こす原因になる。

プラズマローゲンは人体に60兆個あるといわれる細胞の各細胞内にあるペルオキシソームという小器官でつくられる物質だが、いずれにしろ1ミリの1000分の1のミクロン単位の分子の世界である。

プラズマローゲンには、「イオン輸送」「コルステロール排出」「エイコサイド前駆物質」「膜融合」「抗酸化」「血小板活性化因子前駆物質」などの役割があることが分かっていた。「イオン輸送」とは、文字通り細胞膜を横断してイオンが細胞間を移動すること。「抗酸化」というのは、呼吸で体内に取り入れた酸素の一部が、ストレスや生活習慣で「活性酸素」に変化する状態を抑える作用のことだ。「コレステロール排出」は血管からコレステロールを引き出して動脈硬化を防ぐ作用だ。いずれも脳細胞の基本的な機能をコントロールする大切な機能を担っている。

いずれにしてもプラズマローゲンは生体の維持には欠かせない存在ということはわかっていたが、プラズマローゲンとアルツハイマー病(認知症)との因果関係を結びつける研究は一例も行われてはいなかった。ところが1995年に大変ショッキングな論文がアメリカで発表された。「亡くなったアルツハイマー病患者の脳を解剖すると、海馬と前頭葉の両方においてリン脂質のうちでもプラズマローゲンの量のみが減少している」という論文だった。画期的なニュースだったが、プラズマローゲンの減少がアルツハイマー病の原因になるのか、それともアルツハイマー病になればプラズマローゲンが減少するのか。その因果関係が生理学的に証明されないまま、プラズマローゲンはアルツハイマー病の直接的な原因ではないとされ、そのまま放置されていた。それは当時、アルツハイマー病の原因は脳神経にタンパク質のアミロイドβが沈着することが発症の主な原因とみるのが主流だったからである。それに検証するための試料づくり、つまり生きものの体内から高純度のプラズマローゲンだけを抽出する作業が極めて困難だったというせいもある。

このアメリカの論文が発表された1995年当時、藤野武彦はこの論文を読んではいない。専門領域ではなかったし、藤野自身は心臓や血液という自分の専門分野の研究で忙しかった時期である。やがて藤野は自分の提唱した「脳疲労」概念とプラズマローゲンの関係を結びつけていくが、そのタイムラグを取り戻すのにそんなに時間はかからなかった。