BOOCSブログ

  1. TOP
  2. BOOCSブログ
  3. プラズマローゲン物語
  4. プラズマローゲン物語 (8) (9)を掲載しました。

プラズマローゲン物語 (8) (9)を掲載しました。

2021.08.02プラズマローゲン物語

プラズマローゲン物語(8) 生活習慣病も「脳疲労」から

「脳疲労」を解消するBOOCS法は、生活習慣病全般にも効果があることを証明した。藤野武彦の研究チームは、20年以上にわたってBOOCSセミナーを受講した生活習慣病ハイリスク者を対象とした追跡調査を行い、次のような結果を得た。

1993年度から1996年度までの受講者は男性1018人、女性396人で、体重とBMIはすべての年度で下がっており、明らかに肥満が改善されたことが認められた。また総コレステロールと中性脂肪もすべての年度で低下していた。また善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールはすべての年度で増加していた。これは脂質代謝が改善されたことを意味している。肥満が改善すれば血圧も低下することはよく知られているが、1994年度と1995年度のグループでは最高血圧も最低血圧も低下していた。

また肝機能の指数であるGPT、γ‐GTPが多くの年度で改善された。これらの結果は脂肪肝が改善し、飲酒を禁止していないにもかかわらず飲酒量が減少していることを示している。さらに痛風のマーカーである尿酸値も低下していた。

その後も研究チームのヘルスセミナー受講者を対象とした追跡調査は続行された。

 1993年から1997年までの5年間、BOOCSプログラムに参加した者と男性13835人および女性7791人の日本人労働者を対象に死亡率抑制効果を検討したところ、男性のBOOCSプログラム参加群1565人は、非参加の肥満対照者群1230人と比べて、全死因でハザード比0・54の低い死亡リスクと有意な生存曲線が得られた。つまりBOOCSプログラム参加による死亡の抑制効果が示唆されたのである。これらの結果は2015年、アメリカの医学雑誌に「BOOCSプログラム参加者の死亡率低下:日本の某職域集団における15年間の追跡調査」として掲載された。この論文の結論は「今回の結果により、BOOCSプログラムが死亡率を低下させることが明らかになった。その理由としては、メタボリック症候群の改善によるものと示唆された」と結んでいる。

また糖尿病の患者を対象にBOOCS実行群と食事制限群に分けて1年間の介入試験を行った結果、体重、体脂肪率、血糖コントロールの指数は、いずれもBOOCS実行群のほうが有意に低下改善していることか分かった。

さらに糖尿病患者にBOOCS法を実行してもらい、その前後で血液サラサラ度(赤血球変形能)を調べたところ改善がみられた。糖尿病では微小循環が悪化することが心配されているが、それが改善されたということは、全身の末梢血管に血液を十分に供給することができ、脳においても微小梗塞を予防できることになる。この結果は2012年、アメリカの医学雑誌に「BOOCSプログラムは、糖尿病、肥満患者の赤血球変形能(血液サラサラ度)を改善する」として掲載された。

以上のことから、肥満、脂質代謝、肝機能、血圧、血糖のいずれの指数においても改善が認められ、BOOCS法が生活習慣病全般に効果を持つことが実証された。これらメタボの改善が、全死亡率、全がん死亡率を低下させると推定され、現在その詳細について研究が進められている。

そういうわけでBOOCS法は世間にあまたとあるダイエット法の一種にとどまっていたのではない。

次の新たな展開へと向かうのである。

 プラズマローゲン物語(9) 心臓専門医がなぜ脳に注目したのか

もともと心臓の専門医の藤野武彦が、脳に関心を持ち「脳疲労」概念を提唱するに至ったのは、今から約40年前の1980年頃までさかのぼらなければならない。藤野が九州大学病院で臨床に携わっていた時、「心臓の調子が悪いので専門医に診てもらったが、検査では何の異常もないといわれた」という患者が、セカンドオピニオンを求めて九州大学病院に来院してきた。

こういったケースはよくあることで、診察してみても心臓専門医の診断通り心臓には何の異常もない。しかし患者本人は実際に不整脈のような症状に苦しみ、不安でしかたがないと訴える。当時、藤野は偶然、専門外であるが「仮面うつ病」という概念を知る機会があった。仮面うつ病とは、うつ病の中でも精神症状が目立たず、身体症状という「仮面」をつけて現れるもののことだ。現在ではこの用語は使われず身体表現性障害と呼ばれている。いずれにせよ、形を変えたうつ病で、心臓がドキドキする、胸が締め付けられる、頭痛、胃もたれ、肩こりなど症状は人によってさまざまだが、どの専門領域でもまったく異常がみられないので放置されたままだった。

そこで藤野はその患者に精神科で使う抗うつ剤の少量の10分の1から5分の1くらいを処方して渡した。すると1か月で患者の症状はぴたりと止まった。

当時から、このような症例は少なくなかった。その後、関連した経験を重ねていくうちに、「多くの病気は脳によって臓器が支配されることで起こるのではないか」と考えるようになった。

  そもそも人はなぜ病気になるのか。藤野は日本で最も多い生活習慣病について考えてみた。常識的には、文字通り生活習慣がよくないから生活習慣病になるのだと考えられる。しかし生活習慣がとても良いのに病気になる人もいるし、逆に生活習慣は悪いのに病気にならない人もいる。それで「生活習慣に問題があっても、ストレスをため込まない人は病気にならないのではないのか」と考えてみた。

臨床医として心臓疾患の患者にはダイエットを勧めてきたが、ダイエットに成功する例はきわめて少ない。失敗した人のほとんどが、特別意志が弱いとも思えない、普通の常識的人間だ。どうも意志力だけの問題ではなさそうだ。これはカロリー制限という従来のダイエット法に問題があるのではないかと考えるようになった。「食べたいものを食べられない」というストレスは、脳にとっては最大級のストレスになる。仕事に追われるストレスや人間関係によるストレス以上のものかもしれない。そのストレスが高じると、副腎皮質からステロイドホルモンが多量に分泌され、超肥満につながるという学説もある。もちろん副腎皮質にステロイドの放出命令を出すのも脳の仕業である。

現代社会は仕事によるストレスや人間関係によるストレスにさらされている。藤野はそのストレスを「情報」と置き換えたほうがより的確だと考えた。情報過多になると脳が、その処置に追われて疲れてしまう。放っておくと脳が本来持っている判断力や処理能力が低下してしまう。
これが「脳疲労」で、すべての病気の原因になるのではないかと考えるようになった理由だ。