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長谷川和夫先生と認知症

2018.02.03脳疲労と認知症

昨年11月たまたま新聞を広げると、長谷川和夫先生ご自身が認知症であると率直に語られている記事が、写真とともに大きく掲載されていました。

長谷川先生は「長谷川式認知症スケール」の開発で知られる、我が国の認知症研究の第一人者です。私は、公私に渡りお世話になりました。先生が主催された認知症の国際学会で発表させて頂いたこともあります。

88歳になられた長谷川先生は「自分は年相応の物忘れもあるが、長い診療経験から認知症であることは間違いない」また、「自分がやったこと、やらなかったことへの確信が持てない。鍵をかけたかどうか確信が持てず、何度も引き返して確かめる。今日が何月何日で何曜日であるかもわからない。同じことを何度も聞く」などの記銘力障害・日時の見当識障害が起きたと述べておられています。そして約1年前から認知症の薬も飲んでおられ、自分の認知症を「年を取ったのだからしょうがない。長生きすれば誰でもなる。」と運命に任せ、今を充実して生きることが大切だと書かれていました。

先生が認知症の診療や研究を始めた50年前、1970年前後の認知症の患者さんの置かれた状況は、ひどいものだったそうです。「役立たず、家の恥」とされ、家では閉じ込められたり放置されたり、また、精神科病院や老人病院でも手や腰を縛られていたそうです。2000年に介護保険制度のもと、患者さんの地域ケアや訪問介護が開始。2005年には、それまでの「老人性痴呆」から「認知症」へと呼び名が変わりました。

こうした認知症地域ケアの推進と偏見の除去に、長谷川先生は大きな貢献を果たされました。長谷川先生がカミングアウトされた背景には、認知症への正しい理解を広めたいとの気持ちがおありの様に思えます。80歳代後半では40%程度、95歳以上では80%が、認知症になると厚生省の研究班は推定しています。認知症は、恥ずかしいものとして隠すものではなく、共存すべきものです。

これからの認知症対策として(地域・家庭での共存・共生)という言葉がキーワードになるように思えます。

参考:「認知症 ありのままの僕」 精神科医 長谷川和夫(88)
読売新聞 平成29年11月16日(木曜日)

ブックスクリニック東京・福岡 
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当 
新 福 尚 隆