BOOCSブログ

  1. TOP
  2. BOOCSブログ
  3. ブックスサイエンス
  4. 腹ペコが未来を拓く ~足りないことの豊かさを知る

腹ペコが未来を拓く ~足りないことの豊かさを知る

2012.11.03ブックスサイエンス

「食育祭 in ふくおか 2012」食育祭最前線シンポジウム 2012.11.3

幼児教育、不登校支援、医療、農業、食育での視点からお話して頂きました。
「はらぺこあおむし」のお話の中でふとっちょあおむしがさなぎから美しい蝶になっていく(チェンジしていく)姿と今日本で一番多い病気である肥満症の姿とを重ね合わせたガイドスピーカー&コーディネーターである藤野武彦医師の話から始まりました。 “チェンジ”というアメリカのオバマ大統領の言葉を引用し、地球全体がチェンジしていくことを求められているにもかかわらず変化しないことを押し付けられている多くの子ども達の不幸な現状に目を向け、その子ども達に向けたメッセージとして

あなたは、今そのままで素晴らしいと
あなたは、遊ぶ、だから輝くと
友と共に遊ぶ、だから共に強くなると
自然と一人で遊ぶ、だから寂しくないと
あなたは、日々変わっていく、だから生きていくと
あなたは、地球力を変えられる、だから生まれてきたと

この言葉を添え、新たなネットワーク作りの必要性を語られました。
*「腹ペコあおむし」のお話を知らない方は最後に内容をご紹介しています。

 

長阿彌幹生(教育文化研究所・不登校よりそいネット代表)

子どもと一緒に蝶々を卵から育てているお父さんが、なかなか、さなぎから蝶々になってくれなかった時に、待ちきれずにさなぎの皮をはさみで切って、早く蝶々にさせようとしました。するとさなぎから出てきた蝶々は、その羽を十分に伸ばすことが出来ずに結局死んでしまいました。さなぎの皮を破って出てくるときに、蝶々やセミは脈に体液が充満して羽が伸びます。それを早く出してしまうと、体液が羽の末端まで行かずに羽はしわしわのままで生きていけないのです。絵本の中のあおむしが蝶々になっていく姿を見ながら、大人があそこでいろんなことをしちゃいけないんだと思いました。
子どもの時に過剰なものを与えると、本来発揮できる自然性が発揮できなくなるということを、今回絵本を見ながらあらためて思ったのです。そして本来、さなぎが蝶になっていく時に“待つ”ことをしなければならないように、私達親が子どもに先へ先へと急がせるようなことをしてしまい、過剰に子どもに期待をしたり、何かを与えるということをしてしまっていることが子ども達の不幸な結果を生み出しているのではないかと思うのです。 子どもたちは退屈すると何か考え始め、いろんな遊びを自ら見つけ出していきます。結果として“足りない”ことが子どもを育てていくことになると思うのです。

 

小崎孝子(ふたば幼稚園園長)

子どもたちは植物と同じです。大きな大木も、きれいな花も最初はみんな小さな種なんです。私達はピカピカ光る種を出させる適度な水やりの役目をしているだけです。植物の種をまいて毎日水をやりすぎると、根腐れを起こしてしまいピカピカ光る双葉は出てきません。しかし、ほったらかして何の支援もしないで、援助もしないでいると、ひからびて枯れてしまいます。私たちはひとりひとりが違った色の花の種をもっています。
だけど今の大人、社会、学校はみんな同じ花を咲かせようとします。同じ形の木になってもらおうとします。個々の子どもたちの個性がみんな同じ形にされようとするので、子どもたちは生き詰まりを感じてしまうのです。子どもたちは自然の中に連れ出すと本当に時間も忘れて没頭します。お腹が空こうと痛かろうと、そんなことは頭から外れてしまいます。興味を持たせる。これがとっても大事なことで、子どもたちは、自然の中でいっぱいの気付きや発見をするのです。私たち大人は、子どもたちが本当に元気に心から、嬉し~い、楽し~い、遊びたい、食べたいと思うような環境を作っていく必要があるのです。

 

斉藤和之(BOOCSクリニック福岡院長)

年々増え続けているメタボ、肥満、糖尿病、鬱などの生活習慣病は脳疲労と深くかかわっています。仕事や人間関係でストレス過剰になり、脳疲労状態に陥ると、様々な身体とこころの病気につながっていきます。BOOCS理論は藤野武彦医師が20年前に九州大学在職中に心臓の治療のために痩せる努力をしてもリバウンドを繰り返す患者さんを診て、「北風と太陽」のお話が頭にひらめき生まれたのです。
まず痩せるためには、最初はしっかり食べることからスタートしないと上手くいきません。最初に太陽型で十分に温まる(十分に食べる)と、その後の冷たい北風(空腹)も心地よく感じることが出来るのです。禁止、強制から解放され満腹と満足を味わうことで、お腹も気持ちも満たされ、結果として自分からあっさりしたものを好んで食べたくなるのです。これははらぺこあおむしがとった行動と一緒で、生物の本質だと思います。
そして“空腹感”には二通りあります。ひとつが“飢餓的空腹感”でイライラして力が出ないという“不快な空腹感”。これは脳疲労の症状で、それを放置すると代謝が落ちて脳疲労が蓄積していくので、このような“不快な空腹感”は我慢してはいけません。そのようなときは黒砂糖がとっても役に立ちます。(「脳と黒砂糖」参照)
一方、お腹がグーッとなって食事を楽しみに待てる“期待的空腹感”、今晩何を食べようかというイメージがもてる時は、イメージの湧いたものを美味しく食べると脳が元気になります。そうなると待つ力も出てきてちょこちょこ食いが無くなり、自分のものをエネルギー源として使えるようになるので、体重が落ち、血糖なども改善に向かう事が出来るようになってきます。「腹ペコ」にも二通りあって期待的空腹感を感じる事が重要なのです。

 

高島和子(専業主婦から農業の道へ。南阿蘇村で農薬、化学肥料を使わない自然農に取り組んでいる。一方、多くの方が阿蘇の自然と関われるように、農地、自宅を広く開放している)

自給自足できるお百姓さんにあこがれ、4人の子どもと共に福岡から南阿蘇に移り住んで20年たちました。誰もやっていない無農薬の田んぼを譲り受け、7年前からは全く肥料を使わず、水と太陽の光と人の声で元気なお米を育てる自然農に取り組み、就農当時に植樹した7000本のお茶の苗も、5年前からは一滴の農薬も肥料も与えず、酒作りに欠かせない酒米も無農薬で作っています。
就農当時は、私は女であり、村社会の中で女のくせに、夫がいるくせにとかいろいろ言われましたが、農業への熱い想いで燃えていましたので、やがて農業を女が担っていく時代が来るであろうと信じて頑張りました。そしてやっと農業委員会への申請が下りたのです。今では南阿蘇村には新規就農者も増え、本当に女の人が活躍できる場が出きました。
街から田舎に移り住み、周辺の方々の協力を得て4人の子供を育てた体験から、今は自分が街と村をつなぐ役割を積極的に引き受け、子ども達が自然を楽しむだけでなく、都会生活で疲れた大人の方々に居場所作りをしています。日が昇ったら働いて、日が沈んで一日が終えていくというサイクルをきちんとできる環境で、「楽しかった」「よく眠れた」と帰っていかれます。
南阿蘇村は水を守る環境を作ることを全国に発信しています。熊本は地下水を守りましょうという運動があるのです。森林も水をためますが、水田が一番水をためます。その水が地下水にどんどん流れていくのです。たとえば、水田に少し肥料を入れたとします。人間も元気な人と弱い人がいるように、ご飯を出しても、食べられたり食べられなかったりするように、作物も肥料設計して入れたとしても、100%作物が吸い上げるとは限りません。それに作物は、ものが無ければ無いほど根を伸ばし、力を蓄えて自分の力で生きていくのです。しかし肥料を入れてしまうと一部だけ吸収され残りのものは全部地下の方に落ちて行き濁ったものが地下に流れていくだろうと思うので、私は自然農に興味を持ったのです。自然農にプライドを持ち、消費者の方たちには、それを食べることによって地域の自然を支えているというプライドを持ってもらうお裾分けができればと思っています。

 

下倉 樹(2歳と5歳児の母、“きっず~な”代表、食育イベントコーディネーター、調味料プロデューサー)

富士山の麓での田舎暮らしには、街以上に車は生活に欠かせないものであり、食事も高校、大学でやっていたアルバイト先のハンバーガーを持ち帰り、料理には全く関心を持たないまま結婚。その後妊娠中も同じような生活が続いていました。でも子供が一歳になった頃に、「白い砂糖は身体だけでなく精神的なところにも影響する」と聞いたことをきっかけに食に興味を持つ事になったのです。今私は、若いお母さん方に、食の大切さを知って頂くために、調味料の広報活動をする講師となりました。
調味料の広報活動をする講師となったのは、若い子育て世代に、家計に負担の軽い調味料だけでも本物を使って頂きたいと思ったからです。調味料についてわかったことは、福岡市に関しては年間の一世帯当たりの醤油の購入金額は2千円、それに対してドレッシング、マヨネーズは3千円です。たれ、つゆは3千5百円、単体よりも抱合している調味料を買う方が増えています。本物の調味料を買えば少量で個体のうまみを引き出す力があるのに残念です。国産の大豆で作っているお醤油は0,2%しかなく、残りの99%が輸入物です。世界に誇れる日本の醤油、味噌、酢の材料が輸入物に頼っています。小さな子が大人になったときに本物の調味料が残っている世界にしたいと思って活動しています。
また、食への関心と共に、生活を見直して、シャンプーやボディソープ、石鹸を一切使わずに、オーガニックコットンで髪も身体も顔も洗っています。それと車のない生活を楽しんでいます。車がないと人に頼ることが出来て、コミュニケーションが生まれ、それは私にとって心地よい生活となっています。

 

*エリック・カールの絵本「はらぺこあおむし」
小さなたまごから生まれた“はらぺこあおむし”は、リンゴ、なし、すもも、いちご、オレンジと、毎日その個数を増やしながら食べ続けていきます。それでも満足できずに、チョコレートケーキ、アイスクリーム、ピクルス、チーズ、サラミ、ペロペロキャンディー・・・、ついにお腹が痛くなって泣き出してしまいます。そして最後に食べたのが緑の葉っぱでそれはとても美味しかったのです。満足した“ふとっちょあおむし”はさなぎになり何日も眠り続け、さなぎの皮を脱いで出てきた時には“きれいな蝶”になっていたのです。